2016年1月31日日曜日

韮崎旭温泉 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

◉山梨県韮崎市旭町  〔ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉〕
大人600円 閉店20:00

つつみこむような優しい40℃の源泉が湯口から勢いよく浴槽に注がれている。これは長湯するには極上の泉質と湯温である。浴槽の深さも深すぎず素晴らしい出来栄えだ。湯舟に浸かっている人々は浴槽の縁に身体をあずけ皆一応に湯舟の中央に向かって両脚を伸ばしてくつろいでいる。

よく観察すると浴槽の縁に置いたタオルを枕代わりにして後頭部を基点に全身のバランスを取っている。これは基本的な浴槽での極楽の姿勢の一つだ。浴槽に仰向けになった身体の重さは湯舟に注がれた良質の湯が足腰に代わってそれを支えてくれているようだ。

まるで湯舟の中でプカプカ身体を浮かせているようなこの姿勢は常日頃、全身を支えてくれている足腰がつかの間の休息をしているようにも見える。早速右へ倣えと持参のタオルを浴槽の縁にセットしてそれに頭をあずけ全身を湯に委ねる。枕の浴槽の縁からはふんだんに湯が流れ落ちていく。これはまったく気持ちがよく、これほど贅沢なものはない。



源泉が注がれる湯口まわりの浴槽は見事に褐色に変色している


ふと湯に浸かっている自分の足腰をみると無数の気泡が付着している。炭酸ガスだ。これほどの数の気泡が付着しているのはいままで見た事がない。おそれいった。おまけに掛け湯のできるたまり湯の蛇口には源泉と書かれ、なんと正々堂々と飲用できる証しのカップが置かれている。早速一杯いただくことにしよう。


店主が描いた?不滅な温泉マークは世界共通?




韮崎旭温泉に到着した夜の7時過ぎ。車のヘッドライトなしでは身動きが取れないほどの闇の中。辺り一面は田んぼか畑といった環境だ。温浴施設としては首都圏に暮らす我々の概念はまったく通用しない立地だ。カーナビの案内が終了しても周囲は真っ暗でネオンサインもなく、より詳細なグーグルマップがなければ車をどこに向けて走らせてよいやら途方に暮れて辿り着くのを諦めていただろう。なんとも人間を正直な気持ちにさせてくれるような長閑な雰囲気の中に韮崎旭温泉はある。



闇の中に建つ旭温泉は温泉マークがなかったら全く温浴施設か不明だ





2016年1月23日土曜日

角煮うどん(吉田うどん) ⭐️⭐️

●うどん屋源さん 銀座店 〔山梨県甲府市中央〕


甲府界隈で数店舗の吉田うどんの店を構える「源さん」の繁華街にあるその名も銀座店。ありがちなチェーン店を想像してお店の前にホテルで借りた自転車で乗りつけ店内に入ると驚いた。決して広いとはいえない細長い店舗の客席はカウンター席のみ。その中で切り盛りしている人はたった1人の元美女。うどん屋というよりは小料理屋の女将さんといった出で立ちである。

カウンターに腰掛ける客は若い男女のカップルが3組。時間は土曜日の夜9時前で、いずれもデート帰りの一杯呑んだ後の腹ごしらえといった雰囲気だ。これは入った店を間違えたのではないかと思うほど「うどん屋」らしくない。店内の壁に無造作に貼り付けてある貼り紙にある店名「源さん」を何度も振り返りながら確認してしまった。予想外の展開に少し動揺する干支が申の年男は47歳1ヶ月。まだまだ青い。

さて何を注文しようか。その貼り紙付近の壁に無造作に吊り下げられているメニューを見てまた驚いた。なんとメニューは全て英語で書かれている。大きく深呼吸して落ち着いた素振りでそのメニューを片手に、ひとりカウンター席につく。ふとカウンターの端のほうに目をやると、そこにはもうひとつのメニューが日本語で書かれて置いてあった。

日頃、呑みつけない私が駆けつける店は食事がメイン。数店舗を展開するお店の店構えといえばいたって画一的で面白味は全くないのが常。マニュアルの言葉を投げかけてくるロボットのような若者店員が目立つ首都圏のお店に慣れている者にとって、女将さんの家庭的な対応が、ただ腹ごしらえに「うどん」を食べにきた小生にとってはとても新鮮に感じる。

さて改めてメニューを拝借。「かけうどん」が500円とメニューの下のほうに書かれている。「天ぷらうどん」はプラス80円で楽しめる。これは小生にピッタリの庶民的なお店だ。もっとも「うどん」とはそんなものである。それを見て少し落ち着いた小生は、ふとメニューのもっとも目につきやすい最上部に書かれている「角煮うどん」に目が釘付けになる。

「限定メニュー」とうたわれている「角煮うどん」は「かけうどん」の倍の値、なんと980円とかかれている。同じトッピング形式と思われる「天ぷらうどん」とは400円もの差がある。これはコシのある「吉田うどん」の上に、熟成された味の濃い脂ののった豚のバラ肉の塊の山が溢れんばかり覆いかぶさっているに違いない。

直感で即決。ここは思い切って「限定メニュー角煮うどん」を注文することに決めた。それを聞いて女将は角煮があと1食だけ残っていると言ってくれた。これは素晴らしい。女将は10分程待ってくれと言う。これは10分間で角煮をあたため更に熟成させるのか。期待は胸いっぱいに膨らみ始めた。

「はい、おまたせ!」の声がかかる。カウンターの一段上の配膳台に置かれたどんぶりをドキドキしながら覗き込むように見て驚いた。なんと「うどん」に覆いかぶさっているその姿はドッシリとした存在感抜群の角煮のブロック肉ではなく、まるで麺棒で均一に薄く伸ばされたようなペラペラの、、いや、、、ぺラ、、ぐらいの長身のスライス肉だった。

●「限定!角煮うどん」 980円


ほったらかし温泉 ⭐️⭐️⭐️⭐️

◉山梨県山梨市矢作 ほったらかし温泉(公式サイト)

今シーズン最強の寒波到来。沖縄でストーブが売り切れた週末。土曜日の午後発表の明日にかけての天気予報は天気予報の枠を越えてニュースになるほど「大雪どころか大荒れの天候」と大々的に注意を促す、いや警告に値するほどの報道ぶりであった。

幸か不幸か明日の日曜日は朝から山梨の甲府で仕事だ。明日の早朝の交通手段を考えると現地前泊をしない理由は見当たらない。タイミングよく1週間前に車のタイヤをスノータイヤに交換しチェーンも購入したばかりである。これは車で行くしかない。

生まれて初めて履くスノータイヤでワクワクとドキドキが交差する。甲府までの道のりを考えると途中寄り道しない訳がない。地図を片手にしばし考えるも、迷うことなく途中の山梨市にある「ほったらかし温泉」に立ち寄ることを決めた。

かれこれ10年近く経つだろうか。「ほったらかし」というネーミングに心打たれたものの、なかなか行く機会に恵まれなかったが、こうして大荒れの天気予報の晩に一路「ほったらかし温泉」の温もりを目指す事になった。スノータイヤとカーナビだけが頼りである。


スノータイヤの性能は如何に


中央道の勝沼ICからJR山梨市駅を経由して山を登る。未だ降雪はないが行き交う車は僅か数台。山登りの道はいつしか未舗装路となり山の奥へと入り込む。こんな辺境の地にある温泉はかなり期待できると気分は最高潮に達するも、たどり着いたのは一件の平屋の民家、、いや電灯が灯っていない。どうやらこれは空き家のようだ。

空き家の脇には工事用のバリケードが行く道を一部封鎖している。しかしその横に車が通り抜けるだけの巾は十分空いていて車が進入するには問題なさそうに見える。このままバリケード横を通り抜け直進するも道がつながっているのか、はたまた空き家の庭先に入り込みスタックするか暗闇でまったく見当がつかない。

ここで登場するのが昨年より多用しているグーグルマップである。現在地から「ほったらかし温泉」までは目と鼻の先で、どうやらルートを間違えてかなり大回りしてここまでたどり着いたようだ。このまま少し前進すればマップには道路がありその道路を進めば目的地に辿り着くようだ。

下車して歩いてみるのもよいがここは思い切ってハンドルを握ったまま直進する事にした。バリケードを横目に進んでいくと1台の建設用重機が見える。ここは工事現場なのだろうか。遠く前方にはうっすらと電灯の灯りが家屋からもれるのがはっきりと見えた。

未舗装路は直進しているうちに脇からの舗装路と合流して大きな青空駐車場に辿り着く。ホッとした瞬間だ。特に看板もないが「ほったらかし温泉」の駐車場であることは間違いなさそうだ。車が300台は止められるほどの広さの青空駐車場に車は僅か5〜6台。こんな夜に温泉の温もりを求めているのはわたしだけではなかった。


施設内をうろうろしていると屋外に見事な壁画があった


施設の中にはどうやら2つの浴場があるようだが、本日は悪天候の理由で「こっちの湯」は閉鎖されていた。未だ実際に悪天候にはなっていないが止むををえまい。もう1つの浴場は「あっちの湯」となんとも素朴なネーミングに思わず笑みがこぼれる。案の定、事前調査をしてこなかったので2つの違いはよくわからないがどちらも大差はないと考えるしかないだろう。(豊富温泉の例があるので事前調査は怠らないようにしなければならない)

施設内(といっても雨が降れば濡れる外部だが)を少し奥の方に歩いて行くと簡素なつくりの脱衣場のある家屋にたどり着く。中に入ると番頭さんが一人ポツンと寂しげに腰掛けている。全体としては山小屋のような雰囲気の作りで、最近めっきり見なくなったストーブが小屋全体をあたためてくれている。意外にも入場券は自動販売機で購入。番頭さんの仕事はそのチケットを確認するだけである。料金は800円。ロッカーを利用すると100円玉が必要だ。

浴場は小屋の屋内に湯舟が一つ。屋外は檜風呂と、甲府盆地が最前列から見渡すことができる広い岩風呂からなっている。岩風呂はかなり広く、規模は比べ物にならないが草津の西の河原露天風呂に次ぐ広さだ。適温の場所を探して岩風呂の好位置を探すのもよし。眺めのよい場所で浸かるのもよし。半身浴もできる浅いスペースもある。

情報によるとphの値が10を超えているそうだが個人的にはそこまでの高い数値には感じられなかった。感じるのは消毒臭で岩風呂より小さい檜風呂は顕著で正直その浴槽には浸かっていられないほどだ。しかし視界がひらける高台からの素晴らしい景色に加え、日の出前からの早朝営業を年中無休で継続していることには頭がさがる思いだ。ここの露天風呂でのご来光は格別であろう。大人気で常に混雑している「ほったらかし温泉」であるが、今夜は人もまばらで今年初の温泉はとてもゆったりと過ごすことができた。

追記
あとでわかったことだが「ほったらかし温泉」のカーナビのナビゲーションが間違っているそうだ。自家用車で向かう多くの人が道に迷う。そういえば途中の路上に看板があり「ほったらかし温泉、、、カーナビ、、、」と書いてあった。よく確かめもしなかった自分に落ち度があるので文句を言うつもりは毛頭ないが、このようなカーナビの間違いは何処に指摘してあげればいいのだろうか。それにしてもカーナビのアクシデントはあったものの、降雪はなく、路面も積雪が無い状態で無事に行き来できたので今年初の温泉探訪、まあよしとしよう。