2015年8月29日土曜日

ホームラン弁当

取引先の方に巨人対中日の東京ドームのバックネット裏の席のペアチケットをいただいた。シーズン席を購入してお客さんに営業ツールとして利用しているようだ。以前にもいただいたことがあり長男坊を連れ出したことがある。(ドームでいただいたオレンジ色のタオルによると前回行ったのは2011年シーズン)長男坊は3回ぐらいプロ野球観戦に連れ出しただろうか。東京ドームに横浜スタジアム。夏の高校野球の全国大会の神奈川予選、甲子園球場、、、延べ5回は野球観戦に連れ出している。

保育園時代から公園でのキャッチボールをはじめ、定番の野球盤ゲームもプレゼントで購入して今でも兄弟で楽しんではいる。しかし野球をやりたいとは自分から言い出したことはない。試合観戦もあまり興味がないようでこれは野球に限った事ではなく、以前ユースサッカーの世界大会が駒沢競技場で行われた時に連れ出した時も全く興味を示さなかった。本人曰く、観戦より実際にプレイすることの方が楽しいそうだ。野球よりサッカーが今の時代。週一回のサッカー教室を始めて3年位は経つだろうか。

さて今月6才になったばかりの次男坊にとって初めての野球観戦の機会がやってきた。行く前に長男坊に東京ドームで野球を見たことを覚えているか尋ねたところ、買って食べたお弁当が「ホームラン弁当」だったことをよく覚えているそうだ。勿論わたしは全くそのことを覚えていない。そんなこともあって今回、次男坊のために購入したお弁当は同じ「ホームラン弁当」。帰宅後に次男坊に何を覚えているか聞いてみる。答えは「ホームラン」「アウト」そして「ホームラン弁当」だそうだ。


⚫︎カメラを向けると見事なパフォーマンスを演じる次男坊いずみ君


●全く関係ないがビールの売り子が妙にまぶしく感じる年齢になってしまった



●中身にひと工夫ほしかったホームラン弁当のパッケージ






2015年8月21日金曜日

桃岩荘の思い出

◉北海道礼文郡礼文町香深元地

旅立ちの朝、2泊3日の滞在を終えた小学5年生は宿をあとにする。父親に連れられて「見返り坂」と呼ばれる道をのぼり始めたころ、宿の「緊急指令」によってスタッフは勿論、どこからともなく宿泊者が玄関前の広場に集まってくる。波の音が聞えなければ港の反対側にあたるこの辺りは人家もないもの静かなところ。宿をあとにする若干10才の少年に向かって見送りの「歌」が合唱される。『またくるよ~う』と大声で叫び返すわが息子はじめは、将来必ずまた此処を訪れるだろう。


●「見返り坂」で発ったばかりの「桃岩荘」を振り返り叫ぶ息子はじめ


昭和42年開設。岩壁の下にある100年を超える木造宿舎は、いったん営業を止めてしまえば逆立ちしても営業許可は下りないだろう。事実昨年の8月の礼文島を襲った集中豪雨では、宿舎から目と鼻の先で土砂崩れがあったそうだ。宿の直撃は免れたものの、孤立した桃岩荘のホステラー(宿泊者)とヘルパー(スタッフ)たちは救助隊のヘリで救出された。

全国各地、いや世界から集まる老若男女。学生グループは勿論だが意外にも60歳前後の男性が目に付く。その男性たちはいずれも独りで、しかも長期滞在者だ。聞くところによると6月1日の営業開始から9月末までの桃岩荘の営業期間内にまるで此処が自宅であるかのように振舞い住み込む常連客も珍しくない。


桃岩荘の中心は宿泊者、ホステラーを飽きさせない工夫がいたる所にちりばめられている。その演出役がヘルパーであり、彼らは息をつく暇もなく、まるで役者がごとく常に多種多様な仕事に追われている。並の人間ではとてもこれらの仕事をこなす事ができないだろう。見るところそのヘルパーの中心は4人の若者男性で、多忙な一日の仕事を交代でこなしているようだ。


先ず港での「お出迎え」に始まり、トラック「ブルーサンダー号」の荷台にホステラーを詰め込み一路桃岩荘を目指す。先ずホステラーはこのときトラックの荷台に乗せられたことで日常から逃れた自分に高揚し、ヘルパーのパフォーマンスに一喜一憂する。「音声認識装置」が備わっている「ブルーサンダー号」はホステラーの発車合図の合唱が必須であり、さらにホステラーの鎧を脱がせることに一役買っている。遊園地顔負けのヘルパーによる周辺ガイドは杓子定規の世界に生かされている我々現代人にとって、世界で一つしかない、今ここでしか聞くことができない熱いヘルパーの個性溢れる声は聞く者を飽きさせない。


「ブルーサンダー号」が島を東西に二分している山の中腹にさしかかると、ヘルパーの声にも一段と力がはいる。目前に迫った何の変哲もない「桃岩トンネル」は、なんと「桃岩タイムトンネル」とよばれトンネルを通過するとそこは日本国内で唯一、時計が30分早まる時差がある桃岩時間のゾーンへ足を踏み入れることになる。さらに「桃岩タイムトンネル」では一つの儀式が執り行われる。現代の人間誰もが携えている知性・教養・羞恥心を投げ捨てて桃岩荘に至る事だ。人より30分早く行動し無垢になって人と向き合う。そんな桃岩荘のメッセージがひしひしと伝わってくる代名詞「桃岩トンネル」で我々も知性・教養・羞恥心を自身の体内から取り出し、大きく右手を使ってトンネル内で投げ捨てた。


●闇の向こうが桃岩荘のある礼文島西側で断崖絶壁で海に臨む。
 此処で桃岩荘に必要のない知性・教養・羞恥心を投げ捨てる。
 帰路では投げ捨てた物をしっかり拾って帰らないとあとが大変。


まるで辺りから隔離されたように岩壁のふもとにある桃岩荘は海をも望む抜群のロケーションだ。もはや滞在中の3日間は、世俗から離れたこの「桃岩荘」を脱出することはできない。まるで刑務所にでも入るかのように妙な緊張感を維持しながら我々は桃岩荘の玄関引戸をゆっくりと開ける。そこで待ち構えていたものは遊園地のアトラクション顔負けの余興が内玄関で待ち構えていた人々によって「お出迎え」として我々に向けて行なわれる。

予期せぬ玄関での「お出迎え」を受けた我々は興奮冷めやらぬままヘルパーに館内を案内される。囲炉裏のある広間を中心に屋根裏を利用した2階部分には就寝する2段ベッドが所狭しと並んでいる。回廊のようになっている2階部分からはどこからも広間を見下ろせるようになっている。その屋根裏を利用した2階部分にあるベッドは広間からどのベッドも見渡せ、広間を軸にベッドが放射状にあることから「回転ベッド」と名付けられている。

女性は離れの3階で就寝する。食堂はその2階。食堂の隣の厨房では見るところ男性ヘルパーより多くの女性ヘルパーが夕食の準備に追われている。洗面所は二層式の洗濯機が3台、その上部には電気乾燥機もそれぞれ装備させている。男子トイレの小便器には使用後に流れる自動水洗はもちろん無く、プッシュ式の水栓は取り除かれている。その代わりペットボトルに入った水が小便器の陶器の上に無造作に置かれている。もちろん使用後に自分自身で始末する。


●館内には意外にも自動販売機が1台ある。使用後の缶・ペットボトルは
 この宇宙生命体「ギャラン」によって綺麗に圧縮されてゴミ箱へ投棄


桃岩荘といえば知る人ぞ知る「ミーティング」とよばれるホステラーとヘルパーの集いの時間だ。夕食と風呂を済ませれば息つく暇もなく19時半から一時ほど広間で行なわれる。「ミーティング」は二部構成で第一部は正統な島案内。桃岩をはじめ猫岩、地蔵岩の話から元祖チャンチャン焼きの店と予習が十分でない我々にはとても有難い情報だ。そして第二部は振付の歌を合唱する。少なくとも20人は下らないホステラーはヘルパーを軸に扇状の形に並び、それは二重三重の孤を描くほどの群集だ。そして満を持してヘルパーのトークショーをからプログラムがスタートする。我々はその最前列で「ミーティング」を楽しむことにした。

●ミーティング第一部の島案内は礼文島での過ごし方に役立つ


最前列はいわば桃岩荘初体験者の優先席である。「ミーティング」が始まると同時に初体験者は挙手して最前列へ誘導される。みるとこホステラーの半分が今回初めて桃岩荘を訪れた者。半分は二度目の経験者から常連さんといった配分だ。常連さんである彼らは桃岩荘の一日を知り尽くしている。「お出迎え」「お見送り」は勿論、「歌」「振付」そして「食事のメニュー」まで熟知している。初体験者はもちろん「歌」やら「振付」を知る由も無い。特に踊りの「振付」は初体験者が試行錯誤しているなか、同じホステラーの立場でありながら長期滞在者はまるで第二のヘルパーとしての存在意義を初体験者に示している。


●夕食メニューは中華丼・たこカレー・かき揚丼の繰り返し(常連談)。
 食したあとの食器は自身で洗浄して返却するセルフが浸透している。
 自炊またはセイコーマート(コンビニ)の弁当を食す人も見られる。



「ミーティング」終了後、翌日の礼文島縦走ハイキングに参加する人向けに食堂で説明会が開催される。「8時間コース」と公式にうたわれているトレッキングコースは、事実上日本最北端の島(正式にいうと日本最北端の島は択捉島)の北の果てから南下して「桃岩荘」に帰ってくるルートで別名「愛とロマンの8時間コース」とよばれている礼文島滞在のメインディッシュだ。桃岩荘で用意してくれる明日の昼食「圧縮弁当」をこの場で注文。そうこうしているうちに22時の消灯時間が近づく。ハイキングに参加しないホステラー達はヘルパーを含め広間での会話が弾んでいる。それを横目に我々は歯を磨くともう消灯時間だ。


●途中、路線バスに乗って帰路に着く「4時間コース」も選択可



桃岩荘の朝は6時起床。もちろん桃岩時間の話。朝食をすませる前にその日の滞在の有無をホステラー全員が受付で朝7時までに行ない連泊する人はこの時に支払いを済ませる。時間までに意思表示を行なわないと館内放送で呼び出されるので注意が必要だ。朝食後は朝のフェリーで島を離れるホステラーへの「お見送り」が玄関前で行なわれる。そこでヘルパーとホステラーが一丸となって昨夜、皆で合唱した歌を唄い、彼らの姿が見えなくなるまでこの「お見送り」が続けられる。「見返り坂」を上りながら何度もこちらを見返すホステラーに向かって『またこいよ~う』と熱いメッセージ。涙ぐむ人も決して少なくない。


●玄関前の「お見送り」。中央上部に見えるのが礼文島名勝、桃岩だ。



滞在最終日、玄関前の「お見送り」を終えた夕方の船で離島する我々の最後の仕事は館内清掃である。簡単な広間の床の雑巾がけと食堂の床の掃き掃除。子どもの教育にはもってこいのプログラムだ。そして荷物のパッキングを済ませれば桃岩荘を旅立つ時。夕方の乗船までの半日は地蔵岩を拝んで、知床とよばれる桃岩以南地域のトレッキングで幕を閉じる。


●礼文島到着後に港から出航する行き違うホステラーに「お見送り」
 を行なうヘルパーたちの見事なパフォーマンスを見る息子はじめ

港での出航間際の「お見送り」は一般旅行者や船舶関係者の視線をものともしない「ミーティング」で合唱した振付の歌で、それはヘルパーだけでなく、どこからともなく長期滞在者が桟橋に現れそれを後押しする。港に響き渡る見送りの合唱は、既に乗船を済ませた離島寸前のホステラーの足を甲板に向かわせ、甲板の手摺越しにヘルパーたちの動き・叫びに酔いしれる。これで目頭が熱くならなければ嘘だ。


〔あとがき〕
礼文を離れる前に礼文町郷土資料館に立ち寄って一枚の写真を見て驚いた。
それは先ほどまで滞在していた桃岩荘の白黒写真だった。
まったく変わらない風景に一つだけ違うところが見られた。
桃岩荘目前の海岸に漁のボートが溢れ、その昔の繁栄を今に伝えている。
桃岩荘はその昔、一つの漁港の主要な建物として使われていたようだ。
「8時間コース」の帰り道、また地蔵岩訪問時、計二箇所でトンネル工事が進められていた。
その名も「新桃岩トンネル」。
開通後は現在の「桃岩トンネル」は道としては閉ざされるそうだ。
「8時間コース」の朝、岬まで我々を送り届けてくれたオーナーの後継者はいるのだろうか。
この「桃岩荘」を次世代に向かって、多くのヘルパー卒業生を中心に盛り上げてほしい。



●明け方の桃岩荘からの海岸線。中央に小さくあるのが猫岩。



2015年8月18日火曜日

豊富温泉とサロベツ原野


豊富温泉  ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
◉北海道天塩郡豊富町〔ナトリウム-塩化物泉・炭酸水素塩泉〕

クッチャロ湖から道北を横断する県道を豊富町に向かってドライブ。オホーツク海に別れを告げて比較的平坦な山道はすれ違う車が僅か数台、車無し、信号無し、人影無し。動物注意の交通標識は多かったが、蝦夷鹿は現れなかった。途中二件あった牧場の牛たちが妙に心に残る。大自然の中に置かれた人は他に見るものもなく人間は動物と同じ生き物なんだと当たり前のことを思う。

朝9時前には目的地の豊富温泉に到着する。湯場は二箇所あると告げられ早速見に行くと廊下を挟んで入り口は異なる。つまり二箇所の浴場を楽しむには一度脱いだ衣服を着、また脱いで二つ目の浴場に入るといった手間のかかる行程が必要になる。温泉場の人によるとぬる湯と普通湯の違いだけだでぬる湯は湯治向け、一般客は普通湯を強く勧められた。おまけにこの時間のぬる湯は湯治客に占領されていると聞く。案の定、覗いてみると常連さんと思われる湯治客10人位が丸く円弧を描き湯に浸かりながら談笑している。それに水を差すように脱衣場の戸を引き中を覗き込む小生。20以上の視線が一気に集まる。気まずい雰囲気だ。鶴の恩返しとはいかないが、まるで見てはいけないものを見てしまったようでぬる湯に入るのはあきらめパスしてしまう。

一般客向けの湯場は先客が2人。湯の色は薄めの褐色でその湯の表面に油がプヨプヨ浮いている状態だ。石油臭には慣れてはいるが、ここまで油分が湯に混ざっているのは初体験で笑みがこぼれる。湯に潜り存分に北海道の素晴らしい温泉を楽しむ。至福のひとときだ。子どもに急かされ湯場を離れるも、やはり気になる湯治湯のぬる湯。帰りがけに再度覗くも、湯治客に占領されている状態は変わっていない。まあ湯の温度の違いだけならいたしかたあるまい。自分にそう言い聞かせ温泉場を後にする。

この温泉場は温泉マニアのサイトで知り駆けつけたわけだが、コメントを読んでしまうと湯の楽しみが半減されてしまうため、大半の内容は実際に湯を楽しんだ後に読むことにしている。今回も温泉場名、場所とオススメ度の星マークしか確認しなかった。

帰京して温泉マニアのサイトを読んで驚いた。湯治客用の湯と一般客用の湯は全く異なる湯で、しかもそのコメントを読んだら最後、湯治客用の湯は特筆する湯で絶対に入りたくなるようなことが書かれているではないか。。。。うううっ。。やられた。

今考えると温泉場の人から見ればわたしは子ども連れのごく普通の流れの典型的な一般客で、とても泉質にこだわってこの温泉に来ているようには見えなかったであろう。普通湯を勧めた温泉場の人を責めるつもりはないが、道北まで来て目の前にある温泉を一つ逃した自分に腹が立つ今。再訪して湯治湯に入ることを夢見る。


⚫︎天然石が磨かれている状態を見るかぎり温泉の濃度は聞くまでもない


2015年8月17日月曜日

クッチャロ湖キャンプ場と浜頓別温泉

クッチャロ湖キャンプ場

オホーツク紋別空港から海沿いの国道を北上すること約100キロ。浜頓別は稚内に至るドライブの中継点に位置し、温泉とキャンプが同時に楽しめる施設があるので迷うことなくここで一泊させていただくことにした。

羽田空港の保安検査でキャンピングガスを没収されキャンプ場での食事に若干の不安があったが、幸運にもアウトドア用品も扱うスーパーマーケットに巡り会いキャンピングガスと食料を買い込むことができた。これでキャンプ場での食事には支障がなさそうだ。

途中、サロマ湖と興部町に寄道。オホーツク海を臨むドライブにエアコンは不要で、窓を開けて受ける風が涼しげに私たちを迎えてくれた。東京の距離1キロは横浜の5キロ。東京の1キロは北海道の10キロ。そんな車中での会話のなか、窓からの景色は、あたり一面に広がる草原と牧場。道路の巾もゆったりと作られていて車の走るスピード感覚も内地とは異なり、60km/hで走っているつもりが80km/hは出てしまうといった具合だ。

⚫︎牛と海そして草原 生まれて初めて見るこの景色はまさに異国情緒



●麦畑 生まれて初めて見るこの景色はまさに異国情緒


初めて北海道の地を踏む息子、はじめは初めて見る車道境を示す矢印に興味津津。雪国ゆえの事とは理解できるが赤色と黄色があり、違いを質問されるが正直よくわからない。信号機は雪が信号機の上に積もらないように配慮されているのか、もしくは制限速度表示もない国道ゆえ、スピードを出すドライバーが多いため安全を配慮してかわからないが信号機は全て縦型で勿論赤灯が上にある。北海道はまるで異国。私もなにを隠そう僅か半年前に初めて北海道を訪れたばかりの北海道初心者である。

クッチャロ湖のキャンプ場には夕方の6時頃に到着。日が暮れるまでにキャンプ場で借りたテントを張らなければならない。テントはテント内で直立できるほどの高さをもつ大きさでファミリー向けの5人用といった具合でかなり大きい。このような大型テントは当然今まで張ったことがない。正直、小型のテントでさえ前回の海外旅行のチリ、パイネのトレッキングで人の手を借りて張った経験しかない。学生時分からテントを張ったオートキャンプ、山中のテントには興味はあったが時間と金に余裕がなく、これらの活動は将来の楽しみに取っておいたもののひとつであり、なにを隠そうまったくのキャンプ初心者である。





浜頓別温泉 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
◉北海道枝幸郡浜頓別町クッチャロ湖畔〔ナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉〕

見馴れた褐色の湯の浴場は平成の世に作られたいたって平凡な公営の温泉浴場「はまとんべつ温泉ウイング」はクッチャロ湖湖畔に建つファミリー向けのホテル併用温泉である。夏休み期間中とあって道内からのファミリーを中心とした多くのお客さんは浴場内で夕飯前後の湯を楽しんでいる。

併設されている湖畔のキャンプ場の管理はこちらで行われていて、秋の気配がする肌寒い陽気といつの間にか寒がりになっていた子どもの体調も重なって毛布を一枚レンタルした。キャンプ場は広いこともあり人はまばらに見えるが数えるとそれでもしっかり30人はいた。車、バイクそして自転車と交通手段は様々だ。決して広くはない浴場にも30人近くの人が所狭しと広大な北海道にしては少し密度が高い。

空が臨める露天風呂でもあれば人口密度もさほど気にはならなくなるものだがそれも無く期待も半減される。そんなことはおかまいなしに子どもはこれから入る湯舟を前にニコニコはしゃいでいる。動く速度も子どもらしく小走りだ。そんな姿を見ていると湯の質は二の次。父親として子どもと旅行できる喜びを噛み締め湯舟に浸かる。

浴槽にゆっくり浸かり右手で湯を揉む。その感触に驚く46才。見事な弾力性に富んだ湯で素晴らしいヌルヌル感。これは恐れいった。完璧にやられた。いたって平凡な湯と思いきや、口元が緩む。薄口醤油で作ったタレのような絶妙なトロミは浴槽に浸かる老若男女がまるで中華丼の具に見えてきた。

今夜はキャンピングガスでマカロニを茹でミートソースを加えてあたためる。そしてワインと乾き物、スナック菓子で一杯。締めはカップ蕎麦。帰宅したら自炊メニューの中華丼に副題として「浜頓別温泉タレ」を付記しよう。中華丼のたびに思い出す温泉は驚きも加点され堂々と星5つとさせていただく。北海道の温泉恐るべし。

⚫︎倒壊寸前のファミリーテントは強風にあおられながらも朝までこらえてくれた